圧倒的破壊力の敦賀気比 2014年の夏。待ったをかけた平成の大横綱。
2014年夏の甲子園大会。
この2年前、藤浪晋太郎・森友哉を中心とした大阪桐蔭が春夏連覇を達成。そしてこの年2014年も、大阪桐蔭の優勝で幕を閉じた大会だった。
ただ、この大会で度肝を抜かれたというか、近年の高校野球の中でも群を抜くぐらいの興味深いチームがあった。
福井県代表 敦賀気比高校
この2014年夏の甲子園の次の甲子園大会である、2015年春の選抜甲子園で優勝することになるが、2014年夏のイメージがものすごい残っている。
成績は、ベスト4。
でも戦った試合全てにおいて、強烈な印象を突きつけられた。
なんと言っても、強打強打強打。超がいくつついても足りないほどの超強力打線。2000年代に入ってからは、強打の印象が強いチームはいくつかあるが、それに匹敵もしくは超えているかもしれないほどの打線だった。
2000年、100安打11本塁打の大会記録を作った智辯和歌山、
2001年、大会記録の打率.427で優勝した日大三高、
2004年、その日大三高の記録を塗り替える打率.448ので優勝した駒大苫小牧。
まあこれらの記録は凄すぎて、正直10年20年じゃ絶対に塗り替えられる事はないだろうと思っていたが、この時の敦賀気比は、久々に大会記録を塗り替えるんじゃないかと本気で思えたチームだった。
そもそも地方大会の結果でそこまで注目されていたかというと、そうではない。
福井県大会では、5試合を戦って平均8.2得点。新記録となる打率.438で優勝。記録も作って、もちろん高い得点数だが、甲子園の記録を塗り替えるかもしれないほどのチームとは思っていなかった。それに準決勝の啓新戦では、9回に逆転サヨナラで勝ち上がっており、大苦戦する場面もあった。
なので甲子園であれほど打ちまくるとは誰も予想できなかったと思う。
では実際に甲子園の結果を元に、振り返ってみる。
スポンサードリンク
甲子園でも圧倒的な破壊力
▶︎1回戦
敦賀気比16-0坂出商業
先発全員安打の21安打を集中。投げては当時2年生エースだった平沼翔太(現:北海道日本ハムファイターズ)が3安打完封。圧倒的な試合だった。ちなみにこの勝利は、敦賀気比にとって夏の甲子園17年ぶりの勝利だった。
▶︎2回戦
敦賀気比10-1春日部共栄
初回から4番岡田の2ランで先制すると、2回にもビッグイニングを作り、序盤から完全に敦賀気比ペース。終わってみれば2試合連続二桁得点での圧勝。エース平沼はこの試合も投げ抜き、1失点完投勝利。
▶︎3回戦
敦賀気比16-1盛岡大付
初戦に続き、先発全員安打20安打を放ち、16得点で快勝。盛岡大付も強打のチームだが、全く寄せ付けずに圧倒。
このあたりから、決勝までこのペースで行くと大会記録を塗り替える可能性が十分にある事を意識し始めた。
ここまで3試合で平均14得点。甲子園では考えられない数字。上位打線下位打線関係なく全ての選手のスイングが鋭い。まさに圧倒的だった。
▶︎準々決勝
敦賀気比7-2八戸学院光星
ベスト8の壁も危なげなく超える。初回に5番峯が3ランを放ち、3点を先制。その後も着々と得点を重ね、11安打7得点で快勝。二桁得点は3試合でストップしたが、強力打線は健在。
ここまで4試合。正直危ないと思う場面は一度もなかった。とにかくリードを許したことが一度もない。序盤から持ち前の強打でどんどん突き放していく。
勢いは出場チームの中で一番あったと思う。このペースでこのまま残り2試合行けば、大会安打記録を更新して優勝する可能性は十分にあった。
正直太刀打ちできないほどの強さだった敦賀気比だが、
この凄まじい勢いを止めるとすれば、あの高校しかないと思っていた。
案の定、やはり大きく立ちはだかることになった。
そして運命の準決勝を迎える。
スポンサードリンク
準決勝 敦賀気比vs大阪桐蔭
相手は誰もが認める平成の最強校。
敦賀気比がいくら圧倒的な打力で勝ってきたとはいえ、あの西谷監督が指揮する精鋭部隊大阪桐蔭がそう簡単にやられるわけがないと思っていた。
でも心のどこかで、
「今の敦賀気比なら大阪桐蔭に打ち勝つことができるかも」
「というか敦賀気比の方が強い」
と何気なく感じていた。
そんな思いで、試合を見始める。
すると初回敦賀気比の攻撃時。いきなりその予想が的中する。
連打で満塁のチャンスを作り、5番峯のタイムリーで先制。なおも満塁で、6番御簗は右中間への満塁ホームラン。強力打線がいきなり大阪桐蔭のエース福島を捉えて5点を先制した。
初回の大量点。今までの試合ではもうこれで試合が決まっていた。今回は大阪桐蔭相手だが、あれだけ相手エースから連打できる打線の活発さを見ると、さすがにこれは正直勝負あったかなと思った。
でも今回の予想はすぐに覆った。
1回裏、大阪桐蔭の1番はキャプテン中村。カウント0−2から捉えた打球は左中間スタンドへの先頭打者ホームラン。いきなり反撃開始。
さらに2番峯本、3番香月が出塁後、5番森のタイムリーツーベースで2点を返す。
この回だけで3点を返し、詰め寄る。
ここから両チーム打撃戦となる。
↓試合の経過は別記事で細かく書いているのでそちらを参照↓
シーソーゲームとなった試合は、終盤に大阪桐蔭が底力を発揮。終わってみれば9−15。敦賀気比の勢いを大阪桐蔭が止める形となった。
大阪桐蔭は、次の決勝でも三重高校に勝利し、2年ぶりの全国制覇を達成した。
この年の敦賀気比が力負けしたのはもちろん初めて見た。とはいえ大阪桐蔭相手に9点取るのもかなり難しいこと。ホームラン数は両チームで5本。近年まれに見る超打撃戦となった。
私自身も打撃戦というのは見ていてハラハラして好きなのだが、あそこまで初戦からワクワクさせてくれるチームというのはなかなか無い。地方大会ではあれだけの大差で勝ち上がる事は珍しくないが、甲子園でしかも相手も強豪だらけというのに圧倒して勝ち上がったことには本当に脱帽。
またその敦賀気比に待ったをかける大阪桐蔭の存在も圧巻。全勝の大横綱に対し、番付は下位ながらもこちらも全勝で千秋楽を迎えた大相撲のようだった。
敦賀気比の快進撃はベスト4という形で終わったが、この勢いは新チームとなってからも続き、翌年春の選抜で福井県勢初となる全国制覇を達成する。
どんな相手でも毎試合コンスタント打ち続けるチームは、やっぱり見ている側からすると大変面白い。高校野球の醍醐味の大きな一つだと思う。
スポンサードリンク